らぶバト! 制作ブログ

『らぶバト!2nd Attack』外伝SS

明けましておめでとうございます! オオシマPです、お久しぶり!

8ヶ月ぶりのブログ更新です。
でもまあ、仕方ない、ノベルの宣伝でサイトの方は更新してたんですが、CDに関しては何もネタがなかったので……。
たぶん今後も、ないです……。すみません。

で、なんで今日更新したかって言うと、フォルダの整理してたら販促目的で途中まで書いた『らぶバト!』のショートストーリーが出てきまして。
たぶん特典用に使えるかもしれないみたいな感じで書いたのですが、途中でその話もなくなり放っておいたんですね。
それ見たら何かとても懐かしい気分になりまして、ちょっと加筆して公開することにしてみました。
よろしければ読んでみてください。

以下、注意事項!
●時系列的にはドラマCD『らぶバト!2nd Attack』直後のショートストーリーです(つまりライトノベルとは無関係です)。
●解らない用語が出てきたら、用語集で確認してね!

それではどーぞー。

 

 

『らぶバト!2nd Attack』外伝SS

~御鏡宮からの使者~

書いた人:オオシマP

天聖院学園第四区画、茶道部・園芸部共同自治区――。
学園の茶道部と園芸部は同じ人物が部長を兼任する部活動である。
天聖院学園に数多ある部活動の中でも、彼らの規模は生徒会から広大な第四区画全ての行政権を与えられるほどの、他に類を見ない強大さであり、天聖院学園部活動総連の中において最大勢力を誇っていた。
生徒会執行部、そして学園の治安を守る風紀委員会でさえ、茶道部・園芸部の意向を無視出来ないほどの勢力を持つに至った理由は、両部活を統括する、一人の学園最上級生にあった――。

その日、茶道部棟としての役割を果たす七重の塔、通称「七波羅茶塔」最上階に、女子部員の悲鳴が響き渡った。

「さ、桜ノ宮部長! 敵勢力、第六茶室を突破、下層全茶室が陥落しました! 敵がこの“桜花庵”まで辿り着くのは時間の問題です! た、退避を!」

全身傷だらけになりながらも危機を知らせに駆け込んできた女生徒は、最上階“桜花庵”の主に避難を促す。
主は茶を点てる手を止め、奥座敷から女生徒に問いかけようとした。
が、必死の女生徒を嘲笑うかのように、彼女の背後に現れた少女――弐双 雷樹(にそう らいじゅ)は言った。

「時間の問題、じゃねーよタコ」

「きゃあ!」

雷樹が振りかざした錫杖から閃光が放たれ、女生徒の身体を射貫く。
肌からは黒煙が立ち上り、微かに身体を痙攣させながら、女生徒は倒れ伏した。

「お、寸前でレジストしやがった。こりゃまだ生きてやがんな。さすが天聖院のエリートさんはしぶといねえ。なあ、水樹?」

雷樹は振り返りながら、後からやって来たもう一人の侵入者に声をかける。

「ここが最上階の“桜花庵”? 思ったよりあっけなかったかな……」

水樹(すいじゅ)と呼ばれた少女はつまらなそうに感想を漏らした。
金髪のショートヘアーに挑戦的な視線、パンキッシュなカットジーンズにタンクトップというボーイッシュな出で立ちの少女、弐双 雷樹。
そして、水色のカールしたセミロングの髪に酷薄な笑みを浮かべる、フリルが多用された黒いワンピースの少女、弐双 水樹。
どちらもその服装とは全く相容れない、禍々しい形状の錫杖を携えていた。
弐双 雷樹、そして弐双 水樹。
“三神九曜十二宗家”の一角“弐双家”が最古の霊術と最新の科学技術を織り交ぜて創り出した、ツーマンセルの霊的人間兵器である。

「オレたちの実力なら当然、だろ?」

「そうね雷樹……。さて、やっと見つけたわ。アナタが桜ノ宮 依梨主ね」

先ほどから雷樹と水樹のやり取りを見つめていた“桜花庵”の主、つまり茶道部部長である桜ノ宮 依梨主(さくらのみや いりす)は、視線を手元に戻し、水樹の問いを黙殺するかのように茶筅をかき回し始めた。

桜ノ宮 依梨主――。
天聖院学園部活動総連の総代表を務める高等部三年生。
そして、茶道部と園芸部、二つの部活動の部長を務める才媛である。
学園でのカテゴリーランクは“A”。が、彼女の能力がAランクを遥かに超越していることは学園において周知の事実である。

なぜなら。

学園最強のSランク能力者である天聖院 麗華と、“神が与えし真理の瞳”の力を解放した麗華と互角に戦いうるのは、強者揃いの能力者が居並ぶ学園においてすら、桜ノ宮 依梨主ただ一人なのだから。

「おい、ナニすましこんでシカトくれてんだよ? オレたちはお前に用があってわざわざ本土からやって来てやったんだぜぇ?」

雷樹の挑発に、依梨主は小さくため息をつきながら煩わしさを隠さずに答えた。

「……まったく騒がしいわね……、私は貴女たちに用などありません。早急に“桜花庵”から立ち去っていただけるかしら」

うんざりしたような依梨主の返答を意に介さず、水樹が言う。

「そうはいかないわ、子供の使いじゃあるまいし。私たちは、我らが大神官、御鏡宮 朱鷺那様の命を受けて貴女に会いに来たのですよ」

「ありがたく承ってくれよなあ! アーッハッハハハハ!」

御鏡宮 朱鷺那(みかがみのみや ときな)――
日本を実質支配する三大勢力“三神”の一角、御鏡宮家の当主であり、御鏡宮大神宮の大神官を務める日本最大の霊能力者。
そして、麗華同様の開眼者である。

「ずいぶん懐かしい名前が出てきたわ……、ともかく、朱鷺那が何の用があろうと私の知ったことじゃないのだけれど」

「おい……、てめえ朱鷺那様に対する口の利き方には気を付けろよ。オレの雷杖で黒こげにされたくなきゃあな」

「待ちなさい雷樹、まずは朱鷺那様の命を伝えるのが先よ」

錫杖を構えた雷樹を、水樹は片手で制した。

「私は御鏡宮大神宮“十二神官”が一、弐双 水樹、そしてこの子は同じく雷樹。貴女も“桜ノ宮”の人間なら、当然聞き覚えはあるでしょう?」

水樹の問いかけに依梨主は答えた。

「ふん。御鏡宮守護九曜“弐双”家の手の者……か……。家名の通り、双子が一対で本領を発揮する人間兵器さんね。それで? 九曜九家であり大神官直下の貴女方が、天聖院学園の善良な一生徒であるこの私に一体何の用かしら」

「朱鷺那様の神命を授けます、心して聞きなさい桜ノ宮 依梨主」

水樹は懐から厳重に包まれた書簡を取り出し、それを広げ朗々と読み上げた。

「『御鏡宮分家“桜ノ宮”当主、桜ノ宮 依梨主。過去“桜ノ宮”が犯した罪を赦し、我が恩赦によってその家名を分家筆頭に復籍することを命じる。我が片腕となり、御鏡宮大神宮を支えよ』……、以上です」

「そういうことだ、あんたはめでたくオレたちのお仲間になるってこったよ。わかったらとっととついて来てもらおうか」

「補足すると、朱鷺那様は貴女に大神官補佐の席次を用意しています。つまり、貴女は私たちを率いる立場に立てるのですよ」

「ヒューすげえ♪ どんだけ強ぇか知らねえけど、朱鷺那様はよっぽどてめえを買いかぶってるんじゃねえの?」

「やめなさい雷樹、朱鷺那様の神命に異を唱える気?」

「そ、そんなことはねえけど、さ……」

依梨主を無視して雷樹とのやり取りを続けていた水樹は、神命を受ける立場の依梨主に向き直った。

「用件は以上です。桜ノ宮 依梨主、朱鷺那様の神命である以上、貴女に拒否権はありません。私たちとともに御鏡宮大神宮に帰参しなさ……」

「ぷっ、ククク、あはは、あーっはっはっはっははははっははっは!」

水樹の言葉が終わる前に、依梨主はもう堪えきれないといった体で大笑いを始めた。
大神官たる朱鷺那への敬意が全く感じられない依梨主の態度が癪に障ったのか、雷樹の形相が変わる。

「おい……、なーにが可笑しいんだてめえコラ!」

雷樹の恫喝にも動じることなく、依梨主は高笑いを続ける。

「ククク、あは、あははははははっ。な、なにがって……、こんなに可笑しいことはないわよ。あーあ馬鹿馬鹿しいったら。では大神官補佐として貴女たちに命じるわ、今すぐ、私の目の前から、消え失せなさい」

「ああ? ……ふざけてんのかてめえ……!」

「別にふざけてなんかないわ。いいこと? 私はこの学園を、とてもとても気に入っているの。気候は温暖だし、最低限の校則さえ守っていれば誰にも邪魔されず私のライフワークである茶道や園芸に打ちこめるし、ほんと、言うことないのよね、ふふ」

口元に笑いを残しつつ、依梨主はさらに言った。

「それに、私は寒いのがとても嫌いなの。東北よりも北、しかも北海道の地になんて、とてもじゃないけど住めないわ。朱鷺那にそう伝えてくださらない? あと、『金輪際、私の生活を邪魔するな』とね」

相変わらず朱鷺那への礼儀を失した返答に、雷樹のショートヘアーが帯電しつつ撥ね上がった。

「てめえ……、それが誉れある御鏡宮分家当主の言うことか……」

「最初に言ったでしょ? そんなことは私の知ったことではないわ」

「ならばこちらも言いましょう。桜ノ宮 依梨主、貴女、本土に二人の妹を置いてきているわね」

業を煮やしたのか、水樹が二人の会話に割り込んだ。
水樹が発した『妹』という言葉に、依梨主が微かに反応する。

「ん……?」

“切り札”によってこの場の主導権を得られたと思ったのか、水樹は微笑みながら勝ち誇ったかのように依梨主に言った。

「貴女の妹たちが帝都にいることは、既に調べがついています。“千里塚インフォメーション”の情報だからこれは確実だわ。貴女の妹たちは完全な一般人で、戦闘能力という点において皆無なのも調査済み。いくら天聖院の支配下にある帝都とは言っても、か弱い少女二人をどうこうすることくらい、我々には簡単なことよ」

「そういうことだ、可愛い妹のためにがんばっちゃえよお姉ちゃん! ギャハハハハハハハハ!」

水樹同様、切り札によって依梨主の威勢を封じたと感じた雷樹は、けたたましい高笑いを“桜花庵”に響かせた。
……が、依梨主自身は全く違うことを考えていた。

(一般人……? 仮にもこの私の妹が、完全な一般人てことあるのかしら……? ま、別にどうでもいっか)

「ご納得いただけましたかしら? 依梨主“さま”」

勝利を確信した水樹が依梨主に問いかける。
が、しかし。

「ねえ、何をカン違いしているの? 私は妹を帝都に捨ててきたのよ? 妹たちも私という姉が存在することさえ知らない。そもそも、妹だろうとなんだろうと、他人がどうなろうが私の関知するところではないわ。貴女達に襲われて死ぬというなら、それがあの子たちの寿命なのよ。……弱者に存在価値などないわ」

……依梨主の返事は水樹の予想を完全に裏切るものだった。
依梨主の言葉に、雷樹は文字通り目を丸くする。

「うわーひでー、こりゃひでぇ、こりゃひでぇわ、大事なことだから二回言っちまったよ。聞きしに勝る自己中っぷりだなコイツは」

若干の戸惑いを感じつつも、水樹は冷静さを失ず、なおも依梨主に対する恫喝を続けた。

「……脅しではないことくらいわかっているのでしょうね。我々がやると言ったら、本当に殺るわよ」

「どうぞどうぞお好きになさって。それで、もうお帰りかしら? 面倒事に巻き込まれるのはゴメンだから、生徒会に通報するのはやめておいてあげるわ。さあ、とっとと消えてちょうだい」

もう用件は終了とばかりに、依梨主は犬でも追い払うかのように手を振った。
水樹と雷樹、弐双家の人間兵器に対する興味はもう完全に失せているようであった。
もちろん、二人があっさり引き返すはずもない。

「ハイそーですかって消えちまうのが簡単なんだろうけどなあ……、そんなことしたら朱鷺那様にお仕置きされちゃうってもんだぜ」

「桜ノ宮 依梨主、ならば無理にでもついて来てもらいます。五体満足で朱鷺那様にお目にかかれるとは思わぬように」

二人の宣戦布告に対し、依梨主は薄笑いを浮かべて答えた。

「フフ、ウフフ。腕づくってことね、ククク……。ねえ貴女たち、私ってば勝手に想像しちゃうんだけど、朱鷺那は貴女たちにこう命令したんじゃないのかしら。“神命により依梨主を大神宮に連れ戻せ、……ただし。神命に応じず脅迫にも屈しない場合、戦闘は回避し早々に帰還せよ”とかなんとか。大体こんな感じじゃなあい?」

朱鷺那の命令を予想した依梨主に対し、水樹と雷樹は微かに動揺の色を浮かべた。

「……ああ?」

「……確かに、朱鷺那様は貴女との戦闘を命じていない、しかし、大神官の神命は絶対よ。どうあっても大神宮に帰参してもらいます」

その返答に、依梨主は再び笑い出す。
一連の会話の中で最もツボにはまったのか、彼女は最早、畳の上を転げ回っていた。
その姿に、礼節を重んじる茶道部部長の品格はほとんど感じられない。

「あははははははははは、あーはっはっははっはははははは! ククク、ウフフ……、あーあ朱鷺那の親心も片無しね……、そういうところがキライなのよ、アンタたちの」

「もはや問答は無用よ、水杖“轟瀑”!」

「最初っからこうやってりゃ時間もはぶけたんだよクソが! 雷杖“震電”!」

依梨主の完全に人を馬鹿にした態度に業を煮やしたのか、弐双家の人間兵器が戦闘態勢を取った。
水の力を司る水樹、彼女が操る霊装は水杖“轟瀑”、雷の力を司る雷樹、彼女が操る霊装は雷杖“震電”、水と雷のコンビネーションは相性としては最高である。
彼女たちそれぞれは、学園のカテゴリーランクAには、わずかに及ばない。
しかし、双子の力を合わせることによってスペック以上の力を引き出す弐双家の人間兵器の総合能力は、Aランクを上回るであろう。

霊力を全開にしてにじり寄る二人を前にしても、依梨主は全く動揺してはいなかった。
それどころか――。
彼女はこれまでで最も邪悪な笑みを浮かべる。

「ふふふ、いいわ。朱鷺那が私を必要とした理由、その身で思い知りなさい……」

 

 
――そのわずか3分後。

 

 

 

ぼろ雑巾の如くズタズタになり、惨めに“桜花庵”の床に転がされた水樹と雷樹の姿があった。

「ゲホォッ……、な、なんだ……、コイツの……、ち、ちから、は……、霊力と、超能力、だと……、ば、化け物、かよ、く、くそぁ……」

「バカな……、霊装も持たない、素手の……、相手に……、十二神官である、わ、私たちが、こんな、簡単に……」

二人共に、霊装の錫杖は粉々に砕け散っている。
肉体だけでなく霊的ダメージも受けた二人は、完全に戦闘能力を失っていた。
依梨主が本当に殺す気であれば、いつでも二人を殺せるであろう。

「命だけは助けてあげる、貴女たちに引導を渡すなんて面倒なことは、私の仕事ではないから。それはこの学園の偉い方々に任せるわ」

「チ、チクショウ、てめえ、なんかに……」

なおも戦う意志を失わない雷樹に対し、家畜を見るが如き視線を向けて依梨主は冷たく言い放った。

「貴女バカじゃないの? もうわかったでしょう? 私の能力“緑色革命”(エメラルディア)は、朱鷺那の霊力と同レベルよ。この期に及んでそれすら理解出来ないというならそれで結構、この場で殺す」

「ぐ……」

「やめて雷樹……、ここは……引くしかないわ……。朱鷺那様のお許しなくして、まだ死ぬわけにはいかない……」

息も絶え絶えの水樹が必死に雷樹を制止する。
もしそれがなければ……、依梨主はあっさりと雷樹の首を刎ねていただろう。

「くそお……、くそおおおぉぉぉ……!」

「貴女の意思は朱鷺那様に伝えます……、このままで済むなどとは、ゆめゆめ思わぬように……!」

最後の力を振り絞り、水樹は脱出用の霊術を発動させる。
そして……、飛沫の中に彼女ら二人の姿は消えた。

残された依梨主は、半壊した“桜花庵”の惨状を眺めて、一人ため息をついた。

「まあ、いずれ御鏡宮からちょっかいが出るとは思っていたけれど……。そろそろ私も色々と考えなきゃいけないかしらね……。学園長の妖怪ババアから何やら手紙も来てたようだし、はあ、私は平穏無事に生活したいだけなのだけど……」

麗華を除けば正真正銘学園最強の能力者、
開眼していないにも関わらず開眼者と互角に戦闘を展開する規格外の怪物、
霊術と超能力双方の力を操る異能“緑色革命”の継承者、

それが……彼女、桜ノ宮 依梨主であった。


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